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ホソミオツネントンボ(越冬明けから秋までの魅力に迫る)

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トンボファンの皆様、お待たせしました。ホソミオツネントンボの生活史の続きが完成しました。
画像をクリックして一枚一枚の写真をじっくりご覧ください。

ホソミオツネントンボ ♂

3月中旬、最高気温が18℃前後の日が続く頃、体色が越冬色から薄い水色に変わり成熟に向かう時。

ホソミオツネントンボ ♀

メスはオスよりも体色変化は少ない。

ホソミオツネントンボ ♂

春先は寒暖差が大きい為、気温が低下すると再び越冬色に戻る事がある。

暖かい春の陽射しが続く3月下旬の水辺で、美しいブルーに成熟したオスの縄張りが見られると、
生殖活動シーズンの到来となる。

ホソミオツネントンボ ♂(成熟個体)

越冬色と比較すると全く別種のトンボに見える。

産卵環境

3月下旬から5月中旬の生息水域は雨次第で、水溜り程度の水量しかない年が多く、
それでも何処からともなく集まり生殖活動が見られる。

連結

交尾

連結産卵

2ペアの連結産卵

集団連結産卵

交尾は午前中、産卵も午前中から見られるが、産卵に入ったばかりの個体は超敏感なので至近距離での撮影は気温の高い午後がいい。産卵最盛期に水が少ない年は、唯一水が溜まっている一ヶ所に集まり集団連結産卵が見られる事もある。ホソミオツネントンボの産卵に必要な条件は、水溜り程度でも必ず水がある事。水溜りが出来ていない場合は水が溜まるまで産卵期が遅れる場合もある。産卵は水辺と岸辺に生えたイネ科、ガマ、カヤツリグサ等の柔らかい新葉や茎に限定され、枯れた植物には産卵しない。

単独産卵

産卵は3月下旬から7月上旬まで継続しメスのみの単独産卵が見られる事もある。

産卵痕

岸辺に生えたエノコログサの葉に残された産卵痕。
茶色に変色が見られ卵は葉の組織内に埋め込まれている状態。

生息水域(夏の景観)

春には水溜り程度だった場所が例年5月下旬になると、突然、満水条件になっている。これは周辺にある田んぼの水管理と関わりがあると推測。この先、田んぼが無くなり水管理がされなくなってしまうと、ホソミオツネントンボを含め、ここに生息する水生昆虫、両生類は絶えてしまう残念な事になってしまう。そうならないように引き続き危惧種の調査を行っていきたい。

終齢幼虫

7月上旬に採集した終齢幼虫(ヤゴ)の体色には個体差があり全体的に茶褐色の個体が多い中、
この個体は綺麗な緑色が見られていた。

羽化は水の入り方次第で早い年には6月下旬から始まり9月上旬まで続く事もある。

定位

羽化中

翅を伸ばしている時にアジアイトトンボの未成熟のメスが写り込んだ場面。

時間帯は早朝から午前中。撮影は順光より逆光の方が、
腹部や翅の透けた様子を表現できるのでより羽化の雰囲気が強調される。



羽化開始から飛び立つまでにかかる時間は3~4時間。暖かい日ほど早い。

羽化後の様子

2オスが羽化殻に掴まっている様子。

羽化の密度が高いと、こうした面白い場面を見られる事もある。
羽化後のテネラルは肌色。ライトベージュかペールオレンジに近い体色。
未成熟のオスと成熟のオス

羽化後のテネラル個体と前世代の成熟個体が同時に見られる事もあり、タイミングと運次第では両方をワンフレームで撮影できる可能性も秘めている。成虫で1年間も生きるトンボは他に類を見ない。
これもホソミオツネントンボの魅力のひとつ。

成熟のオスがテネラルのメスと連結

前世代のオスがテネラルのメスに連結した例。メスの翅には一部にダメージが見られていた。

羽化後のメスがリスアカネのオスと同じ枝に静止。別種との出会い頭の面白い一面。
リスアカネに食べられてしまいそうだが、トンボは動いている虫しか捕食しない。

未成熟のメス

羽化後は水辺に隣接した薄暗い林の中でヤブ蚊などを捕食しながら翌年の春の成熟期まで生殖休眠に入り水辺に姿を見せる事は無い。また、生殖休眠期の未成熟は夏の気温でも体色はブルーに変わらない。

未成熟のメス

10月下旬、秋の木漏れ日で日光浴をする場面。

生息水域(中秋の景観)

田んぼの水管理と関わりがある証で11月上旬には殆ど水が無い状態になる。残念ながらヤゴで越冬する乾燥に弱いトンボは生きられないが、リセットされる事により、こうした環境を好む生きものにとっては保全エリアに相当する稀少な棲家となっている。


冬が近づく11月下旬の頃、気温が低下した日は越冬体勢になっていた。越冬シーズンが近い証。

以上。

東京都のホソミオツネントンボ 10年間の生活史の記録のまとめを最後までご覧くださりありがとうございました。ホソミオツネントンボの生活史だけでも一冊の本を出せるほど知られざる場面が含まれた内容だったと思います。

ホソミオツネントンボの越冬の魅力に迫る!も合わせてご覧ください。

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